平成15年6月1日の法(船舶職員及び小型船舶操縦者法)改正により、それまで船員の常識・マナーとして取り扱われていた内容が「小型船舶操縦者の安全責務」として法律となりました。

この制定は、操縦免許受有者の増加とそれに伴う海難(航行中の船舶の船体・人命・積み荷等に危難が生じること)が増加したことが背景にあります。

遵守事項は、やみくもに制定されたわけではなく、過去の海難の分析や先人の知恵を基に作られたものです。5年に1度の更新の時だけでなく、出港の際は毎回口に出して確認するぐらいの気持ちで操船するべきでしょう。きっと、あなたの快適で安全なマリンライフの役に立つでしょう。

船舶免許の遵守事項 7項目

遵守事項は、下記の7項目となっております。

  1. 酒酔い等操縦の禁止
  2. 免許者の自己操縦
  3. 危険操縦の禁止
  4. 救命胴衣などの着用
  5. 発航前の検査の実施
  6. 適切な見張りの実施
  7. 事故時の対応

下記に概要をご紹介させていただきます。詳細につきましては、講習や講習の際にお配りする教本をご利用下さい。

1.酒酔い等操縦の禁止

酒酔い操縦の禁止は、自動車の飲酒運転禁止と同じ趣旨の順守事項となります。

飲酒にともない血中アルコール濃度が増加することにより、操縦者の注意力・判断力・運動能力が低下し、事故を起こしやすくなります。

もちろん、飲まないで操船することは当然のことでありますが、船舶の場合は飲酒OKと勘違いしている操縦者もいるのが現実であるため、飲酒操船らしき船舶があったら、近づかないなどの自己防衛もお忘れなく!

2.免許者の自己操縦

免許者の自己操縦とは、免許保持者による直接操船を義務付けています。

例えば、水上オートバイを操船する際、免許保持者がハンドルを握る必要があり、仮に後ろのシートに免許保持者がいても、無免許者は操船することができません。

3.危険操縦の禁止

危険操縦の禁止とは、危険な操縦を抑制し他者との事故が発生しないようにする趣旨です。

特に船舶と遊泳者の事故では、遊泳者が死亡又は大怪我を負うことがあるため、遊泳者がいる可能性のある水域には原則近づかない、やむを得ず航行する場合は最大限の注意が必要となります。

4.救命胴衣などの着用

救命道衣着用の有無により事故時の生存率が著しく変わってきます(救命胴衣を着用しないことにより事故時の生存率が低下します)。自動車でいうシートベルトと同じように考えていただければ結構です。

5.発航前の検査の実施

この項目は、発航前の検査の実施を義務付けることにより事故の発生を防ぐ趣旨となります。

マリンエンジンは、構造は自動車のエンジンと大差はありませんが、常に水・塩分の侵食に晒されており自動車のそれよりも比較的劣化が早くなっております。また、万一洋上でエンジントラブルが起きると、対処しにくいという特徴があります。

自動車のメンテナンスと同じ感覚は大変危険ですのでご注意下さい。

6.適切な見張りの実施

見張りとは、周りを見回し運航に必要な情報を取り入れるための動作をいいます。

見張りを怠ると事故が発生しやすくなるため常に適切な見張りを実施することが義務付けられています。

特に沖にでるほど、他船と遭遇する機会が減るため油断しがちですが、相手の船舶も油断している可能性もあるため衝突事故が起きる可能性が高くなりますのでご注意下さい。

7.事故時の対応

事故が起きた際は、冷静に状況を判断し人命の救助を最優先して下さい。ただし、まずは自船の安全を確保してから他人の救助を行いましょう。